核医学治療と線量評価のこれからの課題

福島県立医科大学 右近 直之

2016 年に223Ra による去勢抵抗性前立腺がん骨転移への初めてのα線放出核種を利用した核医学治療が保険収載された.
さらに2021 年に131I-MIBG や177Lu-DOTATATE などの新しい治療用の放射性同位元素を含めた核医学治療薬が相次いで保険収載となり,国内でも177Lu-PSMA-617 や211NaAt の治験が現在行われているなど,核医学治療はこれまでの131I による甲状腺がん治療だけというイメージから大きく様変わりしている.
放射線治療外部照射ではコンピューター技術の発展とともに高精度な治療計画により,腫瘍への吸収線量を高め,正常組織への吸収線量を低減することが可能となっている.
一方で核医学治療はこれまで,患者毎の治療計画ではなく決められた放射能や体重当たり一定の放射能を投与しており,厳密な治療計画は行われていない.
新たな治療が行われていくなかで腫瘍への吸収線量だけでなく,正常組織への吸収線量を正確に把握し副作用の発生を最小限にとどめるための治療計画が核医学治療においても必要となってくることが考えられる.
核医学治療における主要及び正常臓器の線量評価は,組織を幾何学的に配置した標準人のモデル(ファントム)を用い,放射性薬剤の体内動態から各組織の吸収線量を計算するMIRD 法が用いられる.
臨床においてはPET やSPECT などの核医学イメージングを経時的に撮像し解析することで生体内の動態を測定し線量評価を行うことが基本である.
そこで本講演では核医学治療における線量評価について解説を行い精度の検証や課題を洗い出し共有したい.