放射線・放射性物質の発見から100 年以上が経過し,その利用は社会生活に大きく貢献し,特に医療分野では欠かせないツールになっている.その一方で,広島長崎への原爆投下,JCO 臨界事故,原子力発電所事故,放射線検査や放射線治療に関する医療事故など,放射線・放射性物質に対する負のイメージ(社会不安)につながるような事象も起こっている.病院で診療を受ける患者の中には,放射線被ばくに対して不安を訴え,放射線障害のリスクを過大評価して検査を拒否するケースも珍しくない.このような社会状況中,放射線防護分野を専門として活躍する人材の養成は大きな社会ニーズとなっている. 放射線防護分野で活躍する人材に求められる知識をピックアップすると,ざっと考えただけでも以下の大項目がある. これらに加え,放射線物理,放射線計測,放射線生物の知識も必要になり,中項目,小項目にわけて考えていくと,項目,内容ともに多岐にわたり,放射線防護分野を学び,その知識を身につけるのはハードルが高い.
本講演では,そのハードルを少しでも下げるべく,放射線防護分野で身につけるべき知識に関して,大きく「初学者,中級,専門家」の3 つのレベルに分け,一問一答形式で解説していく.本来であれば,大項目を網羅的に解説すべきところではあるが,時間の制約のため,このような形式になってしまうことに関してご容赦いただきたい.本講演が,放射線防護分野を専門として社会での活躍を目指す方々の一助になれば幸いである.