茨城県は,歴史的には日本原子力研究開発機構の誘致の背景より,多くの原子力施設を有する地域である.これにより我々の生活は豊かになった一方,放射線災害によるリスクと常に向き合っていかなければならない.また,原発施設の無い都道府県においても,近年では放射線テロによる放射線災害のリスクは避けられないのが現状である.このような有事の際,我々診療放射線技師は放射線に関するスペシャリストとして,的確に市民を避難誘導し,医療機関として被ばく患者を受け入れ,医療チームの一員として被ばく医療に貢献していかなければならない.そこで,本講演では放射線災害に必要な知識・技術を身につけるべく,専門研修の現状について解説する. 現在,本邦において原子力災害医療研修を主導するのは,量子科学技術研究開発機構でとりまとめている放射線安全規制研究推進事業である.本事業において体系化された研修は下表の通りである.基礎,専門,高度専門の3 つの区分に分けられ,様々な項目の研修が受けられる.
その他の研修に,筑波大学の「放射線災害専門スタッフ養成プログラム」がある.本プログラムはリカレント教育をキーワードに,日頃日常業務で忙しい社会人でも履修しやすくなるような工夫としてe ラーニングによる講義と,web とのハイブリッド演習により専門知識を習得することが可能であり,詳細については講演内で紹介したい.本講演がみなさまにとって,放射線災害について一度考えるためのきっかけとなれば幸いである.