そうだ,大学院へ行こう

つくば国際大学 福士 政広

現在,診療放射線技師の教育課程は3 年制(一部4 年制)の専修学校と4 年制の大学の2 課程となっている.経費と時間を考えれば診療放射線技師への道は3 年制の専修学校が最短で有利である.
さて,他の医療職種についてはどうだろうか.
各医療職種の法令制定年と最短の養成年限を抜粋すると,医師・歯科医師:昭和23 年:6 年,薬剤師:昭和35 年:6 年,看護師:昭和23 年:2 年・3 年,診療放射線技師:昭和26 年:3 年,臨床検査技師:昭和33 年:3 年,理学療法士・ 作業療法士:昭和40 年:3 年などとなっている.
医師・歯科医師,薬剤師を除けば,すべて3 年間の養成課程で免許が取得できる.
養成課程に6 年間を要する医療職種のうち薬剤師に関しては,法令制定年が昭和35 年で診療放射線技師の昭和26 年と比較すると,むしろ診療放射線技師が古い資格と云える.
かと言って,診療放射線技師教育の養成過程を薬剤師と同様に6 年制とすることが必要かと考えると必ずしもそうとは言えない.
何故なら,6 年間の養成に掛かる授業料やその他の諸経費の総経費と就業後の収入と社会的地位や社会からの要望を考慮すると総じてマイナスである.
そこで,総ての診療放射線技師が6 年間教育を必要としている訳ではなく,必要としている人,必要と感じている人が6 年間(学部+修士課程)の教育を受けるべきである.
そのためには,大学院を利用することをお勧めする.
では,どのような人が必要とし,必要と感じているかである.
先ずは,(a)将来大学で教員として研究・教育をやりたいと望んでいる人,次に,(b)研究をより深めたいと考えている人,(c)海外で就労したいと考えている人,(d)単に学歴を向上したいと考えている人などが挙げられる.
それぞれどのような理由で6 年間以上の教育が必要となるかを考える.
(a)大学教員になりたい人は,大学設置基準にある教授・准教授・講師の要件の抜粋では,①博士の学位を有し,研究上の業績を有する者,②研究上の業績が前号の者に準ずると認められる者,③学位規則に規定する専門職学位を有し,当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者などが求められる.
助教においては修士の学位で足りるとなっている.
そのため,最低限修士の学位が必要となる.
(b)研究をより深めたいと考えている人では,大学院設置基準の修士課程の目的に「広い視野に立って精深な学識を授け,専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うことを目的とする.」と有るように研究の発想,計画,実施方法,まとめ方,参考文献の引き方,論文の書き方などをしっかりと身につけることができるはずである.
(c)海外で就労したいと考えている人では,特に欧米先進国においては修士以上の学位を有していると就労ビザが下り易くなる.ほぼ確実に就労できると考えてよい.
近年はアジア諸国でもそのような傾向が見られている.
私の家族の経験だが,夫の海外赴任に同行し,空いている時間を利用して就労しようと考え,就労ビザを申請したとき,学卒の同僚は就労ビザが下りなかったがすんなりと認められた経験がある.
(d)単に学歴を向上したいと考えている人は,自己満足の他に必ずや得るものがあるはずである.
最後に,人生100 年時代を見据え,たったの2 年間だ「そうだ,大学院へ行こう」.